Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

Synthwave:ビデオゲームによって再解釈されたエイティーズ

サイバーパンクバーテンダーゲーム『VA-11 Hall-A』リリースおめでとう。このゲームはプロローグ版から応援してたし、TGSでも見に行った(そしたらなんと自分が大好きなゲームの開発者がパブリッシャーになってたからおどろいた)。我々にとってのこのゲームの魅力はやはり日本カルチャー再解釈だろうと思う。ビジュアル、キャラクター、音楽、あらゆる点で日本的モチーフが見出される。

中でも今回はその音楽について調べてみた。ビデオゲームによって再解釈された音楽ジャンルSynthwaveである。

Synthwaveっていうジャンル自体はなんとなく知っている人はいるだろう。なんかあの80年代的なアレで、ゲーマー的にはHotline Miamiのサウンドトラック(及びが一番わかりやすいだろう。

ちなみにBandcampではその派生ジャンルのVaporwaveが異常に人気で、『VA-11 Hall-A』のサウンドトラックにもそのタグが貼られている。この2つのジャンルの違いを正確に言い当てるのは難しいけど、まあどちらも80年代をテーマにしているが、後者の方はかなり悪ノリしているのは確かだ。

 で、Synthwaveだけどその出自について、Wikipediaの記述はなかなか面白かった。

Synthwaveは、Retrowaveとも呼ばれるが、2000年中頃に発生した音楽ジャンルである。1980年代のサウンドトラックに影響を受けている。

スタイル

音楽的には、Synthwaveはニューウェーブと1980年代の映画、ビデオゲーム、カトゥーン(アニメ)、テレビショウのサウンドトラックに強く影響を受けたものである。John Carpenter、Vangelis、Tangerine Dreamといったコンポーザーはその影響もととして度々、言及される。基本的にはインストゥルメンタルであり、しばしば電子ドラム、ゲートリバーブ、アナログのシンセベース、シンセのリードといった80年代的クリシェを含んでおり、当時のトラックに似せようしている。しかしながら、Shythwaveはエレクトロハウスのような現代的電子音楽において使用されるサイドチェインコンプレッション(コンプレッサーのエフェクトレベルを他のトラックでコントロールする手法)やベースラインとキックの特徴的な配置といった現代のサウンドプロダクションの技術を取り込んでいる。

美学的にはSythwaveは1980年代のSF、アクション、ホラー、またときおりサイバーパンクといったものを再現するレトロフューチャー的視点を与えてくれる。Synthwaveは1980年代文化のノスタルジーを表現しており、その時代の空気をつかみとり、称揚する。こういった美学が現れている事例としては、Kung Fury、Turbo Kid、Drive、Hotline Miami、Far Cry 3: Blood Dragonといった映画やビデオゲームがあげられる。

背景

2000年代の後半を通して、1980年代と1990年代初頭のサウンド、特にニューウェーブとシンセポップをリバイバルしようとするアーティストたちの情熱が存在した。この時代、Telefuture RecordsのようなSynthwaveに似たレトロなジャンルのアーティストをリリースすることにメインフォーカスしたインディーレーベルが現れた。

David GrellierによるプロジェクトCollege、さらに彼の共同プロジェクトValerie Collective、Kavinsky、Lifelike、Anoraakといったフランス人の活動は初期Synthwaveのパイオニアとして貢献した認知されている。これらの初期のアーティストは1980年代の有名なコンポーザーに影響を受けた音楽を作り始めたが、当時はフレンチハウスとの関係が強かった。Anoraakは2014年の後のインタビューで「アメリカのポップカルチャーはまさしく子供時代の俺のバックグラウンドを作ったよ。俺は1980年生まれだけど、アメリカの音楽と映画に囲まれた世界で育った」と語っている。スウェーデンのアーティストMitch Murderは2009年に活動を開始した初期のアーティストであるが、Synthwaveのサウンドの部分としてビデオゲームの音楽を持ち込む道を切り開く一助となった。2010年にデビューしたレトロなシンセサウンドのCom Truiseもまた彼の音楽をSyhthwaveとして言及してきた。

2011年に公開された映画Driveは、いくつかのSynthwaveのアーティストをフィーチャーしている。そして、本作のファンとアーティストをこのジャンルに向かわせるきっかけとなった。

このジャンルへの新しいアーティストの様々な影響を受けて、いくつかのアーティストは初期のアーティストによって作られたSynthwaveの特定の側面へと引き寄せられ、ジャンルと関わるアーティスト間の様々なスタイルの違いを作っていった。KavinskyによるダークなサウンドはPower Glove、Perturbatorのようなアーティストによって引き継がれ、College、Lifelike、AnoraakのようなよりリラックスしたサウンドはFuturecop!、Robert Parkerのようなアーティストによって続けられた。

ポストハードコアバンドのFightstarのAlex WestawayとDan HaighはSynthwaveのサイドプロジェクトGunshipを開始して、セルフタイトルのデビューアルバムは2015年の6月24日にリリースされた。

Synthwave - Wikipedia, the free encyclopedia

 このジャンルが使われだしたのは結構、最近のことだと思うが、この記事ではゼロ年代後半のフランスのValerie Collective一派について触れられている。同時代的には彼らの音楽は80年代レトロスペクティブなフレンチハウスやシンセポップ扱いされてたと思うけど、今は遡及的にSynthwaveのパイオニアとされている。なぜかというと彼らの音楽を使用した『Drive』がヒットして、それに影響を受けた『Hotline Miami』がヒットして、そこからSynthwaveが流行ってきたからみたいな感じだ。

もちろん、Wikipediaの記述はそんなにあてならないし、これだって独自研究扱いとかされてるが、個人的な実感からもこの解釈はわからなくない。

というのは、Valerieは確かに80年代に傾倒してその時代のテクノロジーや映画を参照していた。だがその後の世代はさらに80年代に普及したポップカルチャーとしてのゲームにコミットするようになったからだ。Kavinskyなんか実際ゲーム作ってたし。

ともあれ、このジャンルに対してビデオゲームが与えた影響が大きいというのはなかなか面白い。だってゲーム音楽が音楽に影響うけることはあっても、その逆はあんまりなかったからね。