Midwest Emo in East Asia/東アジアで花開くミッドウェストエモ
East Asian Midwest EmoというプレイリストをSpotifyでなんとなく作った。Midwest Emoは1990年代の中西部(Midwest)のEmoシーンを指す総称で、たぶんAmerican Footballが一番有名だ。ポストハードコアの中では比較的クリーントーンのギターサウンドが特徴で、印象的なアルペジオ、しばしば変拍子を使用したトリッキーでダイナミックなリズム、メロディアスなベースラインなどが特徴に挙げられる。
同時代的にはこのジャンルが注目されることが少なかった。このジャンルが広まったのはインターネットの影響が大きく、主に2010年代前後のリバイバルによって再評価されたと言われている。特にAmerican Footballの楽曲「Never Meant」はインターネット・ミームとして定着している(参考)。
(こちらは「Never Meant」を使用したAMV)
インターネットの影響は国境を超えて、いくつかの地域にMidwest Emoからの影響を受けたバンドが登場した。今回はなかでも東アジアのシーンに注目して、プレイリストを作ったのだが、単なる模倣というより、各国による独特の進化を遂げていると言えよう。またフィリピンやシンガポールといった英語圏のバンドが国際的な人気を獲得しているのは理解しやすいが、サウンドが主体であるジャンルだけあって、中国や台湾のバンドも世界にリスナーを持っており、日本のシーンとのつながりも多い。他方、インドネシアやタイなどは地元の音楽ジャンルとの混交がおきており、それはそれで興味深い。
では、各国別にプレイリストにあげたバンドを紹介していきたい。
韓国
音楽大国でありながらも韓国のロックシーンはまだまだアンダーグラウンドで小規模な印象がある。Midwest Emoに関しても直接的な影響があるとは言えず、どちらかといえば、Parannoulに代表されるようなシューゲイザー的サウンドの方がインディーでも人気があるようだ。ということで、いくつかのバンドは調べたけど、プレイリスト選外となってしまった。こういうバンドがあるよって知ってたら教えてほしい。
台湾
日本の音楽シーン(オタクシーンとかもそうだけど)とかなり近い台湾には日本人好みのバンドも多いが、ここではElephant Gymと透明雜誌 / TOUMING MAGAZINEをピックアップしている。後者は名前からわかるとおり、ナンバーガールから直接的な影響をうけたインディーロックだが、BraidなどのエモーショナルなMidwest Emoからの影響も感じられる。
Elephant Gymは高雄出身のマスロックよりのバンド。ボーカル/ベースの女性がフロントマンを務め、テクニカルなベースラインとポップなメロディが特徴である。正直Midwest Emoというジャンルからはみ出ているところは大きいが、アルペジオのギターサウンドには色濃い影響がうかがえる。
最後は拍謝少年 Sorry Youth。名前からUSインディーの影響は明らかだが、そのコミカルな雰囲気はなかなか愛嬌があるバンドだ。やはりここでもMidwest Emo的なギターサウンド、グルーヴは強く感じられ、日本でも人気があるバンドだ。台湾というこれまた政治的な緊張感がはらむ地域ということもあり、「台湾語」で歌うという主義を持った社会的な側面も持ち合わせている。
中国
当局の規制が強い中国はロックバンドにとって活動しにくい地域ではあるが、なんといってもアメフトならぬ、チャイフトことChinese Footballというそのものずばりなバンドがいる。
ナンバーガールなどの影響も感じられるそのサウンドは、日本のロック好きならすぐにでも入っていけるポップさと繊細さを持っている。Emoを強く意識した自虐的な楽曲テーマも面白いが、それだけではなく中国社会や世界情勢という問題に切り込んだ誠実さの感じさせる楽曲「The World Is Splitting in Two」などもとても印象的。
中国に関しては彼らの存在の大きさで他のバンドをピックアップできなかった。またChinese Footballは日本のバンドと積極的にコンピレーションアルバムを出しているように、日本のシーンとのつながりのほうが深いのかもしれない。
と思ってたけど、もうひとつピックアップできた。缺省Defaultである。北京のサイケデリックバンドであるらしい彼らは、そのフィードバック音やザラつきからシューゲイザー(ドリームポップ)っぽさもある。ただ繊細ギターフレーズにはMidwest Emoの雰囲気が強く、やさしいボーカルもかなり魅力的だ。
フィリピン
英語が公用語であるフィリピンは昨今、音楽文化の中で結構な存在感があり、直接的に英語圏への影響を与えることも可能になってきた。そのため、Midwest Emoも直系と言えるバンドが存在し、なかなか興味深い。
今回、調べていて一番の掘り出し物はこのRun Dorothyだろう。Midwest Emo直系のアルペジオを使ったギターフレーズに、繊細な女性ボーカルがのるこのスタイルはありそうでなかった感じ。あまり背景的な情報が見つからなかったが、もっと掘ってみたいバンドではある。そもそもフィリピンのロックシーンについて無知すぎるのだが。
ピックアップしたIdentikitはどちらかといえば、ドリームポップ的なバンドだ。ただギターフレーズや楽曲構成にはMidwest Emo的な雰囲気を感じられる。こちらもこれといった情報はなし。
最後はOurselves The Elves。マニラ出身のインディーロックバンドで、あまりMidwest Emoの枠内に収まらないが、キャッチーなメロディに凝った楽曲構成をしているので入れてみた。
シンガポール
シンガポールといえば、まずはForestsがあがる。来日もしており、世界的に人気なMidwest Emoのバンドと言えるだろう。歌詞も英語詞であり、サウンドもポップかつ多彩。グローバルファンをグッと掴むその実力は随一だ。日本をテーマにした歌などもあり、心理的にもかなり近い存在と言えよう。
もうひとつはLong Live The Empire。ちょっと情報がないのでなんともいえないが、こちらもForestsと同じく、直系のMidwest Emoなサウンドを聞かせてくれている。
インドネシア
フィリピンと同じく音楽シーンが勢いのあるインドネシア。若者の人口がかなり多いことで有名で、他のポップカルチャーにおいても目が話せない土地である。音楽シーンは国内需要が大きい感じなので、結構土着化したサウンドが特徴のように思える。ピックアップしたバンドはまずは、Sunny Summer Day。
「2000年代後半から活動するインドネシアのインディ・ポップ・シーンのベテラン」のようだ。ベテランということもあって音楽の幅は広く、Midwest Emoはそのひとつの要素程度かもしれない。ただ切なさを感じさせるギターフレーズはキャッチーかつ2000年代以降のインディーロックを反映している。
次はジャカルタのBedchamber。リバーブが強いギターサウンドはドリームポップっぽさも感じさせるが、フレーズ的にはMidwest Emoにも近い。英米系のインディーと言われれば信じそうな感じにインディーロックとしてすっきり収まっているポップさが魅力だ。
eleventwelfthは女性ボーカルのトゥインクルエモ。ポップなそのサウンドは日本でもかなりウケそうな雰囲気。絡み合うギターフレーズとベースはMidwest Emo由来だが、サウンド的には多少ドリーミーなところが強いし、楽曲構成はマスロックぽさもある。インドネシアはたぶん日本なみに複雑なロックが豊富な気がする。
最後はバンドン出身のシューゲイザー系バンドHeals。やはりシューゲイザー味が強いのだけど、ギターフレーズや楽曲構成はMidwest Emoを感じさせるものがある。
以上、東アジアからピックアップできるMidwest Emoをあげてみたが、タイやベトナムなど触れてない国もある。頑張ればなんかあるかもしれないが、ちょっとそこまで掘ることはできなかった次第。Spotifyのプレイリストは貼ったYoutubeとは別のものが多いのでそっちも聞いてみてください。