Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

ロックンロールの交差点クリーブランド:Peru Ubuデヴィッド・トーマス死去に際して

Peru Ubuのフロントマンというか本体のデヴィッド・トーマスが先日、亡くなった。Peru Ubuはオハイオ州クリーヴランドで1975年に結成されたのだが、クリーブランドの(プロト)パンクシーンを調べているといろいろと面白いことがわかってきたので、その一部をここに記載しておく。

オハイオ州クリーブランドといっても日本人にはほとんどイメージが沸かない土地である(個人的には映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で極寒のエリー湖を訪れるのが記憶に残っている)。五大湖のひとつエリー湖の湖畔にあるこの都市はもともと工業都市として発展しながらも、60年代には産業が衰退しはじめていたらしい。

ただこの都市が音楽の歴史において重要なことはよく知られている。アラン・フリードが「ロックンロール」という名称で黒人向けR&Bを白人向けラジオで流したことだ。そのため、ロックンロールの故郷としての知名度は高く、ロックの殿堂などの施設もある。こういうことからこの地が古くからロックバンドを多く排出していても不思議ではないだろう。

また地理的な特徴も指摘できる。NYにはそこそこ近く(アメリカの感覚で)、まわりにはデトロイト、シカゴなど音楽的に重要な都市が位置している。クリーブランドのパンクシーンはこれらの都市との交流とともに発展してきた。特に知的なアート志向のNYと荒々しいガレージ系のデトロイト双方の影響が相まって、幅の広いバンドを生み出すことになる。

プロトパンクの代表例としてはRocket From The Tombが挙げられる。このバンドの重要性は特筆すべきもので、後にPeru Ubuを結成するデヴィッド・トーマスとピーター・ラフナーが参加し、さらに他のメンバーのジーン・オコナーとジョニー・マンドラックは後にNYパンクシーンで活躍するDead Boysを結成することになる。

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これは初期のライブ音源を集めたものだが、ストゥージズやストーンズのカバーとともにガレージ、フォーク、アヴァンギャルドと結構いろんな要素がすでに入っている。バンド名やジャケットからはB級SF好みが現れているので、ちょっとサイコビリーぽさもあるのが面白い。ちなみに今更ながら気づいたのだけど、Rocket From The Cryptのバンド名の由来でもあるそうな(ビリーっぽさを引き継いでいるのが面白い)。

いずれにせよ、このRocket From The TombからアートよりのアヴァンギャルドなPeru Ubuと、よりわかりやすいガレージパンクのBad Boysが生まれたのはとても納得がいくところだ。

他にもプロトパンク期のバンドには、その暴力的なパフォーマンスが話題を呼んだElectric Eelsやガレージ系のThe Pagansなどが挙げられる。

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これらの音楽とともに奇妙でアヴァンギャルドなPeru Ubuが同居していたのが、クリーブランドの面白いところだ。AIにこのことを聞くと「アメリカのプロトパンクの「肉体派」と「頭脳派」が同居した、非常にユニークな存在」と返ってきた。なるほど。