Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

Bandcampの日本のkawaii音楽シーン特集翻訳:アーティスト紹介① Snail's House、Yunomi、YUC'e

 前回、冒頭のイントロダクションを翻訳したところ、結構な数のアクセスがあったから、個別アーティストの紹介も翻訳しようと思う。と思って、やったところ結構なボリュームがあり、なかなかこのライターさん良く聴き込んで日本の音楽シーンも深くしっており、時間がかかりました。とりあえずはKawaiiシーンで一番重要な最初の3アーティスト、Snail's House、Yunomi、YUC'eの方を訳したので以下で公開します。

元記事はこちら

daily.bandcamp.com

 Snail’s House

ショパンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンが別け隔てなく流れるような音楽一家で育った氏家は、家をよく空ける父親から様々な楽器を譲り受けたそうだ。「だけど、僕はそれらを演奏することはなかった」と彼は言う。「2011年、上原ひろみを聞くまでは、自身の音楽を作ることを試さなかったんだ。」彼は自由時間に音楽室を利用させてくれた高校の先生と、ニンテンドーDSの音楽制作ソフトに助けられながら、試行錯誤で音楽制作を行っていった。そしてニュージーランドに留学しているときは、父親から送られたラップトップを使用して楽曲を作り始めた。「そのPCは壊れていたんだ。だから父はその後、6年使用したPCを送ることになった。」

 

時代遅れのテクノロジーは氏家に速く制作する手段を教えてくれた。というのも、彼のコンピュータは2時間程度でオーバーヒートしてしまうからだ。「頭に浮かんだものをすぐにアウトプットすることができるよ。音楽を生み出すとき、例えば……このメロディにしよう、OKっていう感じで。」最新のSnail’s Houseの作品Ordinary Songs 4では、歪んだドラムといった特定の要素を引き伸ばすことを追求している。「My Holidayは最も長くしている。キックの音は実際にはベースとして機能しているんだ。めちゃくちゃに圧縮したよ。ミックスするのにとても手を焼いた。」

 

「Ordinary Songs 4では、いかにキュートな楽曲をぜんぜんキュートじゃないサウンドで描くかを追求したかったんだ」と彼は言う。歪んだドラムや「アーメンブレイク」をいかに使ったかについて彼が話すのを聞くと、一見してkawaii音楽がいかにドッキリさせるような効果を持つのかが明らかになる。「まず歪んだサウンドを作るところから始めた。普通の人ならビビっちゃうようなやつをね。そして、自らの耳を痛めつけるような音、もしくはジャングルのリズムのようなそれ自体はキュートではないサウンドをキュートなものにした。」

 Yunomi

Yunomiの過剰なサウンドを形付けるために、J-popは重要な役割を持っていた。「 PerfumeCapsuleなどの中田ヤスタカさんの音楽に影響を受けました。もちろん、SkrillexのようなEDMブームのアーティストもそうですが」と彼は話す。彼がそれらのアーティストを発見するのと同時に、Yunomiは最初期の創作物のいくつかに陽気な歌を添える気鋭のパフォーマーであるNicamoqに出会った。日本の伝統楽器とフューチャーベースをミックスしたアイドルプロジェクトBPM15Qのサウンドを作り上げることで、彼はそれらの影響に返答したのであった。

 

「端的に言って、それらが鳴らすサウンドが好きなんです」と彼は日本の伝統楽器について語る。「やっぱり僕は日本の伝統を評価したい。もしkawaiiについて考えるとしたら、やっぱり『日本って何だろう?』と考えるじゃないのかな。だから日本の要素を付け加えた。」Oedo Controllerのようなハードなナンバーでは、三味線のパッセージからいきなり拳を突き上げるようなタイムストレッチサンプルが始まることで、その特徴を加えている。

 

アイドルグループのCY8ERのメインプロデューサーをつとめることを含め、Yunomiはエネギッシュなセットを日本中でプレイし、J-pop産業においてより多くの仕事を見つけることで、昨年はより有名な存在になった。さらに彼はMiraicha Records(文字通り「未来のお茶レコード」) という新しいレーベルを共同設立し、よりキュートな要素と共にダンスよりのサウンドを際立たせた。だが彼は決定的に少しラフなサウンドを好む。「僕たちはコンピュータで完璧なインストゥルメンタルトラックを作ることができる。だから逆のことに魅力を感じるし、それを試してみたいんだ。これは僕のライフワークだね。」

YUC’e
YUC'e

YUC’eはYunomiと共にMiraicha Recordsの共同設立者である。彼女はフューチャーベースサウンドにフォーカスしたできたてのレーベルにより予測不可能なスタイルをもたらしている。東京を拠点としながら、2016年にリリースされたFuture Candyによって彼女は国内外の注目を集めることになった。この楽曲は現代的なkawaiiサウンドの決定的な事例であろう。そのアートワークと歌詞は甘いお菓子を礼賛しており、楽曲はヒラヒラとしたシンセ音とYUC'e自身のハイピッチな歌によって幕を開ける。そしてその2、3秒後、楽曲はピッチが上げられたボーカルサンプルと踊る気満々のベースで引き裂かれる。楽曲の終わりでYUC’eの狂気じみたボーカルが畳み掛ける、その激しさは絶頂を迎える。

 

この骨折しそうなほど激しいアプローチは、彼女のフルデビュー作Future Cakeのすべてのトラックに満ちている。さらにデジタルエイジのスウィングである“Night Club Junkie”やゆらゆら揺れるダンス・ポップの“Tick Tock”といった楽曲で、彼女はさらに意表を突いたアプローチを行っている。十分に聴き込めば、Future Cakeは日本のシブヤ系時代の楽曲をインターネット世代へとアップデートしているように聞こえ始める。しかしながら、彼女がどの方向性を選ぼうとも、YUC'eは「キュート」なサウンドという伝統的なアイデアを切り刻み、よりハードエッジで常に変わっていくものへと再編集しているのだ。

Ujicoとかのインタビューはブログレベルでもあったと思うけど、こうして世界に紹介されるのはなかなか素晴らしいね。でもまだまだ日本でのリスナーは足りてないと思うんだ。個人的にはやっぱYUC'eの最初のアルバムすげーわって再認識しました。 「Future Cakeは日本のシブヤ系時代の楽曲をインターネット世代へとアップデートしている」っていうまさに!なボトムラインはしびれるね。

 

Bandcampで日本のkawaii音楽シーン特集が掲載!冒頭の紹介部分を翻訳したよ

kawaiiってなんだ!って思うかたもいますが、ここ数年日本のインターネット界隈では定着したジャンル?なんだけど、Bandcampが特集してくれたよ。UjicoやYunomiのインタビューをしているみたいで、思った以上、本格的な特集だった。

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はてなブックマークでも結構話題になったから以下、冒頭部をサッと訳してみた。意味は取れていると思うが、サッとだからアテにしないように。いろいろと興味深い引用や発言があって、面白かったよ。

 

「かわいい(kawaii)」ほど広く解釈される日本語の概念はないだろう。この言葉はしばしば――概ね“cute”として翻訳されるが、より専門的には「子供っぽい」もしくは露骨に見下した愛らしさを意味する――アニメから洋服まで様々な日本文化の輸出においてつきまとってきた。2020年の東京オリンピックのマスコットが最近公開されたのを見てみると、そこでは抱きしめたくなるような生き物を生み出すに長けたこの国において盛んな議論がなされていた。“ka-why-ee”と発音される形容詞は日本のファッションからコラボカフェまであらゆるところに展開されてきたし、それは多くの人にとっての従うべきライフスタイルなのだ。例えば、ぬいぐるみのセットを形容する“punk”といった概念として考えて見れば良いだろう。

 

当然のこととしてkawaiiは音楽にも拡大される。西欧に進出することを目指す日本のアーティストたちはしばしば、その言葉を自らにラベリングする。例えば、きゃりーぱみゅぱみゅのような原宿生まれの爆弾から、ベビーメタルのようなキュート・ミーツ・ヘヴィメタルなサウンドまで。より小規模なアーティストもまた、ベルや木琴のようなキラキラした音と忙しいフューチャーベースをミックスしたサウンドによって、そのようなタグワードを得ようとしている。インターネットの一角では、それらの新しい種類のポップミュージックを “kawaii bass”と分類するに至っている。

 

「僕は僕自身の世界観を持っている。みんなは僕のキャラクターを絵で描いて、送ってくれるんだ」と、新宿のカフェでUjicoとして知られる氏家慶太郎は話してくれた。彼はSnail’s Houseとして知られるプロジェクトで使用するアートワークやビデオに登場するカタツムリのようなキャラクターを言っているのだ。このスタイルを前面に出すことで、彼がインターネットにアップロードしたすべてのアルバムとEPは瞬く間に売れ、数千人のファンを魅了した。YunomiやYUC’eといったアーティストと同様に、Snail’s Houseは“kawaii music”の格好の事例だ。

 

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急成長しつつあるこのような“cute”な音楽を作る日本のアーティストたちだが、それでもまだ容易に定義付けられない。甘ったるいサウンドが現れる一方で、ヘヴィなノイズもしばしば登場する。EDMに影響を受けた重いベースラインや刺すようなシンセ音、そして高速ビート。彼らの創作物は概ねアグレッシブと言って良いものだ。氏家は自身のTumblrのフィードでkawaiiイメージを漁るのに忙しい一方、彼が興味を持っている音楽はブレイクコアフュージョンドラムンベースなのだ。

 

「Snail’s HouseはUjico名義以外でキュートな音楽を作るための場所だと思っている。」いかにクリエイティブに行き詰まらないようにやっていくかを説明する際に、彼は言う。より遊び場に向いたサウンドを楽しむ一方で、彼は音楽的に非常に雑食であることは明らかだ。インタビューの最中、最近のお気に入りの音源をスマートフォンで聞かせてくれた。それは歪んで慌ただしいEDMのトラックで、Snail’s Houseのようなリラックスしたスタイルとはかけ離れたものだった。よりハードなプロジェクトのために多くの別名義があることも教えてくれた。

 

kawaiiは日本以外の国ではしばしば誤解される概念だ。多くの人は単純にそれをサンリオや雑誌の『FRUIT』と同一視するが、より複雑な歴史を持っている。1970年代に登場したその言葉は、シャロンキンセラがエッセイ“Cuties In Japan”でティーンネイジャーの間の“cute handwriting craze(可愛い手書き文字の流行)”と記述されたものによって目を引くことになった。それは実際に厳密な書き言葉のルールからのちょっとした逸脱であったのだ。kawaiiがより日本のキュートネスのステレオタイプになっているとすれば、世界中に輸出されるそのタグが付けられたものは――特に音楽は――そのひねりを隠蔽する。実際にきゃりーぱみゅぱみゅの音楽とビデオはkawaiiに対するグロテスクな解釈を想像させる。他方、ベビーメタルの名は体を表す。氏家が指摘した

TomgggAvec Avecといった日本のパイオニアでさえも、コットンキャンディーのような甘い音楽の中に異質なものを忍ばせていたのだ。

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「海外でしばしば‘kawaii’とタグ付けされている音楽を聞くとき、聞くのが苦痛だと感じることがある。というのも、それらは‘kawaii’であろうということにあまりにも意識的であるからだ」と、Aiobahnとして活躍するKim Min-Hyukは言う。彼はソウルと東京というふたつの故郷を行ったり来たりして暮らしてきたが、彼の母国よりも日本のコミュニティによりフォーカスしてきた。彼の音楽もまたkawaiiと呼ばれてきたが、彼自身はそれに同意していない。というのも、日本語ボーカルとアニメスタイルのアートワークを使うことによって、そのタグ付けが安易に適用されていると彼は考えるからだ。

 

「理由のひとつはアニメカルチャーにあるだろう」と、この種の音楽への最近の関心の高まりに関して、プロデューサーのYunomiは言う。日本のアニメに愛を抱く世界の多くの人々がますます増えている現在。日本のアニメ的イメージはミュージシャンを表すための容易な視覚的なスタンプとなった。そして、日本からインスピレーションを得たジャンルで活躍するアーティストは尽きることはない。私は“kawaii sounds”とタグ付けされるもうひとりのアーティスト、Cute Girls Doing Cute Thingsとも話した。「美的な理由のためだけで」東京に在住していると言い張るアーティストだ。彼らは実際にはヨーロッパ出身である。私は彼らだけがこの種の策略を続けているとは思っていない。「彼らはファンタジーを感じることができる音楽が好きなんだ」と、Yunomiは言う。

 

結局、この世代の日本のkawaii音楽の作り手は、新しいサウンドを加えるアーティストとして考えるのがベターだろう。それはしばしば、ハードエッジなものであり、他方でソフトなものとして見られるスタイルを持つ。以下は日本の “cute”な音楽に新しい意味を与えるアーティストである。

 

 個人的にはUjicoとYUC’eは国民栄誉賞上げてもいいくらい素晴らしいよ。もっと注目しようぜ。

 

 

Monika@DDLCはハルヒ説

遅かれながらDoki Doki Literature Clubをプレイした。大方の予想通り、日本のノベルゲームシーンの中ではそれほど珍しくもないジャンプスケアやメタ展開を利用しながらも、かなりコンセプチュアルにうまくまとまった作品であった。それ自体としてはそこまで評価できる作品だと思えないけど、やはりこういう作品が海外から登場してきたことに関しては興味を抱かざるをえない。日本のノベルゲームの歴史を一気に追いついている印象だ。

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まあ前半の日常パートやキャラクター描写のいい加減さなど、駄目なところも目立つ。だけどある種のmemeとして盛り上がっているMonikaの魅了に関しては全面的に支持したいと思う。彼女は神だ。文字通り。

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ただこの彼女の設定自体も既視感があったのは否めない。端的に思うのは涼宮ハルヒからの影響だろう。思いっきしネタバレになるが、Monikaの全知全能ですべてを書き換える能力はハルヒそのものだし、いわゆるJust Monikaな場面の表情やポニーテールといった髪型もおそらく意識して作られたものだろう。そもそも文芸部というなんだかよくわからない部活をやっている意味でもSOS団に似ている。ただ最終的に彼女の全知全能は完全なものでもなく、最後には作者自ら登場するあたりはなんだか徹底していない感じもある。

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ともあれ、このMonika=ハルヒ説はやはり海外のファンの中でも少し話題になっている。ただそれほど言及されないのは、本作がハルヒなどよりも若い層に受けているせいかなと思っている。いずれにせよ、『涼宮ハルヒの憂鬱』における全知全能のハルヒという存在、そして結局オチが提示されないまま終わっている佐々木さんみたいな存在が好きな人はこのゲームをして損はないだろう。特にJust Monikaな場面で淡々と独白されるセリフはどちらかと言えば、佐々木さんだ。

あと海外のビジュアルノベルにありがちな日本のオタク文化への覚めた目線は強く感じた。ある意味では嫌味な作品にも感じるのが、おそらく作者がこれを作った背景には海外の日本オタク(weeb)に見られる煽りネタ“Your waifu is...”があると思う。これはいわゆる二次元嫁に対して「存在しないよ」「現実じゃないよ」とか言って煽るやつなんだけど、日本人のオタクにとっては何が煽りかわからない不思議なネタである。

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おそらく、二次元のキャラクターに対する当然な愛着を感じている日本人と違って、西洋のオタクにとってはこのような感情は違和感があるのだろうと思っているんだけど、それ自体を楽しむ態度みたいなのがDoki Doki Literature Clubにも現れていると思える。その意味でここまでわかりやすいメタネタをこのタイミングで出してくるのはなんとなくわかる。まあそれが結局、逆輸入される形で日本でも人気になっているのもなんだか不思議な状況だ。本作を通して、ビジュアルノベルがさらに普及している感じはするし、今後も様々なタイプの作品がかなりの速度で登場することは間違いないだろう。そのような英語圏ビジュアルノベルシーンに対して日本のクリエイターはどう取り組んでいけばいいのか、そろそろ本気で考える時期に来ている気がした。

 

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二次創作ゲーム?Monik After Storyの告知用画像。このWaifuとのAlone Xmasネタも何故か西洋人は大好きだ



Look back over VA-11 Hall-A

今年のインディーゲームシーンで自分が何事かに関われたかといえば、やっぱり『 VA-11 Hall-A』になるんだろう。もちろん、他にも良い作品、気にいった作品はあったけど、長年(まあ2、3年)推してきたタイトルがようやくパブリッシャーが決まり、コンシューマ機でリリースされるってことはなかなかダイナミックな出来事だった。Playismさんは時間がかかったけど、よく頑張ってくれたと思うし、そもそもパブリッシュどうなの、コラボバーとかやらないのとかまあ無茶苦茶の要望出してたの応えてくれたのはありがとうとしか言いようはない。コラボバーで全く知らない人がこのタイトルについて話したり、秋葉原の電飾にすとり~みんぐチャンが出て来るのはすごく不思議な出来事だ。

ちなみに最初のVA-11 Hall-Aに関するツイートはこれだ。

 

 日本語リリースが決まってからはいろいろ記事を書いたが、ビルドを特別にもらったからプレビューを書かなきゃいけなくて、悩んだ末、単なるラブレターになった。

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ストーリーが重要なゲームゆえにあまりネタバレできないから、これはこれでよかったと思う。タイトルがキャッチャーであったからか、今でもこれは良く読まれた記事だと思う。

TGS 2017ではSukeban Gamesがまさかの来日。当然、Playismからのインタビューは受けた。

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正直、ファン過ぎてインタビュー自体より会えることがうれしかった。あまり時間はとれなかったけど、コアな部分は聞けたから良かったけど、もっとどうでも良い話がしたかった。フェルナンドもクリストファーもある意味で予想していたような若者だった。だけど、彼ら二人の特殊な境遇はインタビューの中で語ってくれたんだけど、こんな話聞いてもいいのってちょっと思った。なんというかやっぱこの辺はメディアで接することとそうじゃない立場で接することの差は感じる。

イラストコンテストも前からやってみたかった。発売前のゲームでやるのは無茶って最初からわかってたけど、『VA-11 Hall-A』に関してはすでにある程度コミュニティが立ち上がっていたことを目の当たりにしてたから、その辺当て込んでやりました。そういう意味では絵師さんには無茶に巻き込んだ感じして申し訳ない気分だったけど、でも本当に素晴らしい愛のある作品が集まったと思う。そしてSukeban Gamesからの講評は本当に愛・愛・愛にあふれるもので、やったかいがあったと思う。イラコンの規定や見本のイラストをくれた洋ナシ氏には感謝である。

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こういうオフィシャルでの立ち回りもしつつ、やっぱもっとSukebanの二人と話したいと思って、自分が主催している結社(笑)Hotline Tokyo主催のパーティーも開催。勝ってにメガクリスマスとか言ってその場しのぎでいろいろしましたが、30人ほどのファンが集まって思いの外に楽しいものになった。

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大急ぎで作ったフライヤー的なものは、山田まりん氏のイカすイラストで、それなりにパーティーらしくなったと思う。何よりファンとクリエイターが直接話せる機会を設けられたのは大きく、Hotline Tokyoのイベントでもかつてない意義深いものになったと思う。本当はある程度、オープンにして広くいろんな人を呼べればよかったんだけど、さすがに時間的に無理があった。そもそも11月までSukebanの二人が東京にいるとは思ってなかった。まあいろいろ事情があるから、帰国しづらかったのもあると思う。

実際のところ私はパーティーのホストとしてあまり二人とは話せなかったけど、いかにアルマのキャラクターメイキングにフェルナンドの家族のエピソードが参考になったか、クリストファーとアニソン話やプロレス話など貴重な話が聞けた。まあなんだろう、話を聞くっていうかこの二人の雰囲気を生で感じたことが何よりも貴重で、ゲームを作るっていう関係が特別な絆によって成立していることを目の当たりにしたことが大きい。

現在のインディーゲームのシーンが成立して10年くらいになると思うけど、自分が関われたことという以上に、ゲームによって自分を表現して、さらにそれによって何かが変わっていく瞬間に立ち会えたことが何よりも幸せ。これからも公私問わずインディーゲームに関してはコミットするとは思うけど、表現や芸術のそういったピュアでポジティブなバイブス(笑)を失わないようにやっていければと思っている。

2017 Music Round Up:Bandcamp沼にハマっている人による今年聞いているもの

音楽は基本的に全部Bandcampで聞いているわけですが……あえてわざとらしいタイトルを付けてみた。まあそれくらいBandcampはオススメなんですよ。ところでSpotifyが今年は日本で本格的に入ってきたんですが、どうなんでしょうかね?俺は最初に遊びで使ってみてニール・ヤングを検索したら『Trans』がオススメされて、これはねーなって思いました。もちろん、過去の洋楽はなんでもある感じで便利は便利だけど、新しい出会いはほぼない。なのでまだ一回も金出してないです。

で、Bandcampなんですが、相変わらず個人的には最強のプラットフォームとしかいいようないです。いろいろアップデートはあったけど、日本語対応が大きかった。結果として日本のアーティストは本当に増えた。トレンドとしては日本勢、ネット勢によるVaporwaveやFuture Funkが本当に人気。Vaporwaveに関しては退屈なものも多いんだけど、最近は結構多様性が見え始めてます。嘘から出た真というかネタから出た真面目ジャンルになりつつある。本当は『ブレードランナー2049』とかの映画に使われればいいんですけど、まだまだネット上のジャンルでしかないような感じですね。

Bandcamp運営側のキュレーションも素敵でした。海外ドリーム・ポップから韓国のインディーシーンとか、オーストラリアのR&Bシーンとか。トップ100も公開されるからチェックしてみてね。

以下では今年気になった音源を紹介。別に今年出てるとかじゃなくて、気になったやつにする。

 まずはサンダーキャットのお兄ちゃん、ロナルド・ブルーナー Jr. やたらめったパワフルなドラムを叩く人だけど、曲はめっちゃソウルフル。っていうか自分はこっからサンダーキャットにハマっていた。

 ウータン・クランのカバーバンドのやつの新作。もうジャケから想像する感じの超ディープなB級アクションソウルファンク。もうかっこよすぎですね。この世界感でのゲームやりたいなー。

 なんかそれほど有名じゃない人なんだけど、超メロウで良い感じのローファイなドリーム・ポップ。ドリーム・ポップやローファイあたりはまだまだ掘ればなんでも出てくる感じのBandcampですが、まじで沼って感じです。

 ドリーム・ポップついでちょっと明るめなやつ。Fazerdazeはポップだしカワイイし日本のファンもいるみたい。なんといってもLucky Girlは90年代のネオアコおじさんをクリティカルで殺せる感じのトラック。ビデオも最高にイケてる。

 中国から登場したアメフトならぬチャイフトことチャイニーズ・フットボール。アメフトらしい清涼としたエモを貴重としながらも、よりポップで日本でウケそうな感じ。さらに違うアルバムではチップチューンやっているナード感も好感だ。

 完全にジャケから入ったヤツ。つまりWoofさんは最高の絵師ってことなんですが、これまた超イケてるVaporwaveからFuture Funkあたりのshit!全然知らないアーティストですが、これがデビュー作でボルチモアの人らしいです。内容はアーリー90年代的なレトロ感を匂わせるハウスなんですが、Vaporwaveの中ではわりかしR&B色が強いのが特徴です。

 男女のデュオのエモ/マスロック。すげーなおいっていう演奏だけど、似た編成のホワイト・ストライプスとかに比べるとかなり爽やかでロックンロールよりもオルタナより。特にギターフレーズはアメフトっぽい爽やかな感じもある。

 エモつながりではこちら。こちらは大所帯バンドのようで、女性が入っているのが特徴。ボーカルもうまい感じで女声、男声混声で爽やかかつプログレッシブ。コーラスといっていいのかわからないコーラスありw バンド名がバンド名のため情報を探すのが困難であるが、どうもボストンのバンドみたい。

チップチューンFM音源カバーで有名な+tekからの新作。お題は『まもるクンは呪われてしまった!』ってことで安井洋介サウンドがお化粧直しして出来てます。原曲の良さがやはり際立ちますね。

 やっぱり今年も素晴らしかったJordan Rakei。どちらかと言えば、ロックっぽい方向に進化して、ものによってはジェフ・バックリィっぽさすらある。しかし、このジャケとこの音楽、シネマティックな感じが素晴らしい。

 ネタ枠。ジャケからも分かる通り、適当に作ったサウスっぽいトラックにボカロでふざけたリリックを載っける極めて下品でナードなやつ。このあたりのスカムっぽいヒップホップを探すことは今後の課題である。

 こちらBandcamp公式ナンバーワンのモーゼス・サムニーの新作。なんといってもLonely Worldがかっこよすぎ。ZUNTATAかと思ったよ。っていうかダライアス好きは聞くべき。まあ全体で通して聞くと多少暑苦しくて胸焼けするアルバムだけど、サムニーのボーカルはなんかもう人間のものじゃないくらいすごい。

日本の至宝、ujicoのSnail's House名義の方。サイコーにキュートでカワイイ未来のサウンド。Snail's House名義の方はクラブ系なんで、そっちが好きな人はそっちでロックよりの人はujicoの『[FLOWERS]』を聞こう。っていうかこの二枚のアルバムを同じ月に出すってどうよ。変態かよ。天才だ。

 これまた日本の至宝、Yuc'eと韓国出身で日本在住のトラックメイカー/プロデューサーのNorによるbeignet。今年、本作を含めて2枚だしているが、素晴らしいKawaii Future Bassである。Yuc'eのハードコア感と歌謡曲感が減ってよりグローバルなポップになっていて、さわやかに聞ける。ジャケットも含めて素晴らしい出来だ。

 たぶん一番聞いたかもしれないミカヅキ=チャンのEP。かなり多くの楽曲を出しているけど、やっぱこれがいちばん素敵。フォロワーの反応も一番良かった気がする。まあ詳しいこと知らなくてもポップソングとして聞けるのが多い。

 たしかイタリア在住のプロデューサーのロボによる日本のトラックメーカーのボカロアルバム。ボカロを使いながら強烈なEDM、だがやはりボカロらしい歌ものといういい塩梅に仕上がっている。

 

なんかまあいっぱい聞いているよなーっていう印象だけど、まじでBandcampはまだまだ面白い音源あるよ。

 

Kawaii Future Japan 2017年11月 Bandcamp

聞いた音源まとめる。聞いた音源まとめる。聞いた音源まとめる。

 

天才。天才だー。逃げろー。

この人まだ20代そこらの日本のトラックメーカーさんで、チップチューンとかはSnail's Houseという名義でやっているみたい。既にかなり有名っぽいぞ。このブログに記事がまとめらていた。

「Kawaii Future Bass」18歳サウンドクリエイターUjicoが初のメディア登場! : たんちゃん。ネット〜サブカルオカンとアニヲタ男子〜

自分は個別のアーティストとして認識していなかったけど、2015年にTREKKIE TRAXからリリースされたされたこのEPは聞いたことがあった。

こっちのと比べると[FLOWERS]はかなりロックであることがわかるけど、いずれにせよポップかつプログレッシブで幅広い。天才、天才だー。

 

これも天才だー。天才。しかも歌も歌えるぜ。YUC'eは女性のトラックメーカーのようだけど、これまたハードコアを基礎としながらEDMやダブステップの影響を色濃く、かなりプログレッシブで多様なトラック作っている。もうなんか説明するの面倒。タイトルトラックのFuture Candyがとてつもなくすごいテンション。

あんまり楽曲に触れなかったけど、日本の若者すごいってことだけ伝えたかった。Bandcampで最近発信してくるのは非常に助かるし、購入していこうと思います。

 

 

ゲームと戦争に関するくだらない考えの類

たまたまSNSとかで回ってきたWIREDのこの記事を読んでみたが……

wired.jp

正直、内容なさすぎて馬鹿なんじゃないかと思った。だって別にこれまでのリンク以外で具体的にゲームと戦争がどう関わるか何にも言ってないのだし。

まあこの記事のクズっぷりは置いといて、巷にあるゲームと戦争ネタについてちょっとコメントしておく。正直なところゲーマーとしてはこのような話題を聞き飽きたし、実際にゲームが軍事教育を含む様々なところで利用されていることは知っている。だけどそれは端的にテコの原理が様々なところで利用されているのを知っているのと大差はない。

問題はゲームというテクノロジーが人間の普遍的な技術であるにもかかわらず、ことさら戦争に関わることを強調するイデオロギーだ。確かにビデオゲームは軍事技術と関連が深いコンピュータによって生まれた。確かにアメリカ陸軍はリクルーティングのためにFPSを作った。でもゲームはインターネットや3Dといったその他のいろいろな技術とも関連するし、様々な教育のためにも利用される。でもそういったことではなく、なぜこのゲームと戦争ネタについてWIREDのようなメディアは特に意味ない記事を更新するのか。

このイデオロギーはせいぜいゲーマーじゃない人が意味深なため息をするために作られているだけであろうし、おそらくある種のテクノフォビアだろう。というかゲームフォビアか。おそらく文化や経済の中で大きくなりつつあるビデオゲームに対するある種の不安感から来ている(もちろん戦争がテクノロジー化していることもあるだろうし、そちらの議論については別に異論はない)。ゲームをあまりやらない人はなんだかわからないものが襲ってきている気分になるんだろう。だからこうでもしてゲームの悪徳を指摘せずはいられないんだろう。

まあ若干被害妄想的な話になるんだけど、WIREDは本家にもっとまともなゲームの記事あるんだから、こんなクソみたいな記事翻訳するんじゃねー馬鹿野郎。だからいつまでたっても日本のWIREDはゲーム音痴なんだ。

 

追記…

書いてて思ったけど、この手の記事はビデオゲームとその他のゲームを明確に区別せずに、なおかつビデオゲームが戦争を変えるとか言ってることが多い。そもそもビデオゲームは様々なテクノロジーの集積物であって、なんか一個の実体ではない。そして人間のモチベーションをハックしてやる気を与えるという意味でのゲームの技術は何もビデオゲーム固有のものではなく、それ以前のゲーム、ゲームじゃないものにある。ゲーミフィケーションとか呼ばれるとはいえ。