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Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

一体感という名の幻想と美的判断

もうだいぶ前になるが、お台場の「Game On」に行ってきた。ああいった展覧会ができるのは本当に素晴らしいと思うけど、会場は展覧会というより無料のゲーセンという雰囲気だった。ただゲーセンより殺伐した空間じゃなくて、来場者が一緒に空間を楽しむような雰囲気になっていた感じがして、展覧会としてはどうかなと思ったけど、これはこれで楽しい。個人的にはアメリカでいったBarcadeみたいなのに近いと思う。なんとなく、格ゲーで知らない人と対戦したりするのはなかなか楽しい。ああいった空気を持つところはもっと増えて欲しいと思う。

中でも一番、楽しかったのは『The Beatles: Rock Band』のプレイ。これはギター、ベース、ドラム、ボーカルで演奏する音ゲーRock Bandビートルズ版なんだけど、なんとなく集まった客が「俺はギター」、「私はドラム」って感じで楽器を持ち、「ツイスト・アンド・シャウトならわかるよ」って感じで曲を決めて演奏する姿は、出来立てホらヤホヤのバンド見たくて微笑ましい。俺も2回くらいプレイした。ビートルズなら誰でも2、3曲は知っているから、初対面でも音楽を通してコミュニケーションできる。そういう空気が生まれる瞬間には素直にグッときてしまうものだ。

実際にはこういった感覚はありふれたものだ。個人的に印象深いのは、文化祭での学内バンド。俺は軽音部に所属していたのだが、文化祭に間に合わせるため、やりたくもない相川七瀬(なんと!)のコピーバンドとかやらされた(しかもメインのギターじゃなくてドラムで)。もちろん、練習もサボりまくりで本番もひどいもんだった。でもそんないやいややっているバンドでも、一瞬、みんなの空気がピタッと合うときがある。俺はドラムでかなりミスっていたけど、たまにタイミングがあってグルーブが出たりすると、ニヤっとしてしまう。「クソ、相川七瀬なのになんでおれは嬉しいんだッ」って感じに。

音楽にはいろいろな楽しみがあるけど、音楽演奏の楽しみは必ずしも音楽そのものの良さに由来しない。別に好きでもない曲だって、他の人との一体感が生まれると人間はなぜだか嬉しくなってしまうものだ。音楽じゃなくてもダンスや祭りのようなものはそう。けだし、人間は一体感に非常に弱いのだ。ぶっちゃけタイムラインで「バルス!」って言っているだけでも楽しい人は日本に数百万いるわけだし。

物事を深く見つめ、作品の良し悪しを吟味する立場からいうと、このような一体感は幻想というと言い過ぎかもしれないが、道を迷うわせるものである。たとえ俺が相川七瀬の演奏でバンド仲間との一体感にグッと来たとしても、やっぱり相川七瀬の曲は糞だし、音楽としてグッとくるわけじゃない。(まあ織田哲郎の職業的なソングライティングはそれなりに巧みだが、あの時代にしてもあのコード進行やギターリフはねーよと思ってた。その後、ナンバーガールの曲『タッチ』でなかばネタ的に似たようなフレーズが使われたがw)。

同じことはダンスにもゲームにもアニメにも映画にも言えるはずだ。当然ながらタイムラインで一斉に「バルス!」と叫ぶ楽しさは『天空の城ラピュタ』の良さを正当化しない。そんなもんで正当化されたら宮﨑駿だったいやだろう。TVアニメを実況しながら見ることが何かしら楽しいからといって、必ずしもそのアニメが良いのではない。みんながやっているからといってそのゲームが素晴らしいのではない。そうなのだ!そうなのだ!

ゆえに物事を深く見つめ、作品の良し悪しを吟味する立場からいうと、一体感は毒である。それらは道を迷わせる。正しい批評をしたいものは、山にこもって作品を吟味する必要があるのだ。

しかし、それでは冒頭の『The Beatles: Rock Band』のようなそもそも一体感を楽しむべきゲームはなんなんだろう。また多くのアナログゲームがその楽しさの要素に社交的なものを含んでいるように感じられる。これへの回答は恐らく2つあり、それら一体感の楽しさをそれをアフォードする作品の美点とみなすか、またはそれらは鑑賞ではなくプレイであるため作品批評とは関係ないとするかである。私は後者の立場にシンパシーを感じるものの、いくつかのゲーム(特にアナログゲーム)に関して後者の立場をとることは不適切であるようにも当然思える。

それともゲームのようなものはやはり、通常の作品とはことなるモデルで考えるべきなのだろうか。クソゲーも仲の良い友達とやれば楽しいというのは事実だ。しかしながら、個人的には普遍的妥当性というカントの黄金率に照らしてゲームも評価したい。The Beatles: Rock Band』のようなゲームはその信念を揺さぶるようなところがあり、非常にいかんのである。