Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

Look back over VA-11 Hall-A

今年のインディーゲームシーンで自分が何事かに関われたかといえば、やっぱり『 VA-11 Hall-A』になるんだろう。もちろん、他にも良い作品、気にいった作品はあったけど、長年(まあ2、3年)推してきたタイトルがようやくパブリッシャーが決まり、コンシューマ機でリリースされるってことはなかなかダイナミックな出来事だった。Playismさんは時間がかかったけど、よく頑張ってくれたと思うし、そもそもパブリッシュどうなの、コラボバーとかやらないのとかまあ無茶苦茶の要望出してたの応えてくれたのはありがとうとしか言いようはない。コラボバーで全く知らない人がこのタイトルについて話したり、秋葉原の電飾にすとり~みんぐチャンが出て来るのはすごく不思議な出来事だ。

ちなみに最初のVA-11 Hall-Aに関するツイートはこれだ。

 

 日本語リリースが決まってからはいろいろ記事を書いたが、ビルドを特別にもらったからプレビューを書かなきゃいけなくて、悩んだ末、単なるラブレターになった。

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ストーリーが重要なゲームゆえにあまりネタバレできないから、これはこれでよかったと思う。タイトルがキャッチャーであったからか、今でもこれは良く読まれた記事だと思う。

TGS 2017ではSukeban Gamesがまさかの来日。当然、Playismからのインタビューは受けた。

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正直、ファン過ぎてインタビュー自体より会えることがうれしかった。あまり時間はとれなかったけど、コアな部分は聞けたから良かったけど、もっとどうでも良い話がしたかった。フェルナンドもクリストファーもある意味で予想していたような若者だった。だけど、彼ら二人の特殊な境遇はインタビューの中で語ってくれたんだけど、こんな話聞いてもいいのってちょっと思った。なんというかやっぱこの辺はメディアで接することとそうじゃない立場で接することの差は感じる。

イラストコンテストも前からやってみたかった。発売前のゲームでやるのは無茶って最初からわかってたけど、『VA-11 Hall-A』に関してはすでにある程度コミュニティが立ち上がっていたことを目の当たりにしてたから、その辺当て込んでやりました。そういう意味では絵師さんには無茶に巻き込んだ感じして申し訳ない気分だったけど、でも本当に素晴らしい愛のある作品が集まったと思う。そしてSukeban Gamesからの講評は本当に愛・愛・愛にあふれるもので、やったかいがあったと思う。イラコンの規定や見本のイラストをくれた洋ナシ氏には感謝である。

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こういうオフィシャルでの立ち回りもしつつ、やっぱもっとSukebanの二人と話したいと思って、自分が主催している結社(笑)Hotline Tokyo主催のパーティーも開催。勝ってにメガクリスマスとか言ってその場しのぎでいろいろしましたが、30人ほどのファンが集まって思いの外に楽しいものになった。

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大急ぎで作ったフライヤー的なものは、山田まりん氏のイカすイラストで、それなりにパーティーらしくなったと思う。何よりファンとクリエイターが直接話せる機会を設けられたのは大きく、Hotline Tokyoのイベントでもかつてない意義深いものになったと思う。本当はある程度、オープンにして広くいろんな人を呼べればよかったんだけど、さすがに時間的に無理があった。そもそも11月までSukebanの二人が東京にいるとは思ってなかった。まあいろいろ事情があるから、帰国しづらかったのもあると思う。

実際のところ私はパーティーのホストとしてあまり二人とは話せなかったけど、いかにアルマのキャラクターメイキングにフェルナンドの家族のエピソードが参考になったか、クリストファーとアニソン話やプロレス話など貴重な話が聞けた。まあなんだろう、話を聞くっていうかこの二人の雰囲気を生で感じたことが何よりも貴重で、ゲームを作るっていう関係が特別な絆によって成立していることを目の当たりにしたことが大きい。

現在のインディーゲームのシーンが成立して10年くらいになると思うけど、自分が関われたことという以上に、ゲームによって自分を表現して、さらにそれによって何かが変わっていく瞬間に立ち会えたことが何よりも幸せ。これからも公私問わずインディーゲームに関してはコミットするとは思うけど、表現や芸術のそういったピュアでポジティブなバイブス(笑)を失わないようにやっていければと思っている。

2017 Music Round Up:Bandcamp沼にハマっている人による今年聞いているもの

音楽は基本的に全部Bandcampで聞いているわけですが……あえてわざとらしいタイトルを付けてみた。まあそれくらいBandcampはオススメなんですよ。ところでSpotifyが今年は日本で本格的に入ってきたんですが、どうなんでしょうかね?俺は最初に遊びで使ってみてニール・ヤングを検索したら『Trans』がオススメされて、これはねーなって思いました。もちろん、過去の洋楽はなんでもある感じで便利は便利だけど、新しい出会いはほぼない。なのでまだ一回も金出してないです。

で、Bandcampなんですが、相変わらず個人的には最強のプラットフォームとしかいいようないです。いろいろアップデートはあったけど、日本語対応が大きかった。結果として日本のアーティストは本当に増えた。トレンドとしては日本勢、ネット勢によるVaporwaveやFuture Funkが本当に人気。Vaporwaveに関しては退屈なものも多いんだけど、最近は結構多様性が見え始めてます。嘘から出た真というかネタから出た真面目ジャンルになりつつある。本当は『ブレードランナー2049』とかの映画に使われればいいんですけど、まだまだネット上のジャンルでしかないような感じですね。

Bandcamp運営側のキュレーションも素敵でした。海外ドリーム・ポップから韓国のインディーシーンとか、オーストラリアのR&Bシーンとか。トップ100も公開されるからチェックしてみてね。

以下では今年気になった音源を紹介。別に今年出てるとかじゃなくて、気になったやつにする。

 まずはサンダーキャットのお兄ちゃん、ロナルド・ブルーナー Jr. やたらめったパワフルなドラムを叩く人だけど、曲はめっちゃソウルフル。っていうか自分はこっからサンダーキャットにハマっていた。

 ウータン・クランのカバーバンドのやつの新作。もうジャケから想像する感じの超ディープなB級アクションソウルファンク。もうかっこよすぎですね。この世界感でのゲームやりたいなー。

 なんかそれほど有名じゃない人なんだけど、超メロウで良い感じのローファイなドリーム・ポップ。ドリーム・ポップやローファイあたりはまだまだ掘ればなんでも出てくる感じのBandcampですが、まじで沼って感じです。

 ドリーム・ポップついでちょっと明るめなやつ。Fazerdazeはポップだしカワイイし日本のファンもいるみたい。なんといってもLucky Girlは90年代のネオアコおじさんをクリティカルで殺せる感じのトラック。ビデオも最高にイケてる。

 中国から登場したアメフトならぬチャイフトことチャイニーズ・フットボール。アメフトらしい清涼としたエモを貴重としながらも、よりポップで日本でウケそうな感じ。さらに違うアルバムではチップチューンやっているナード感も好感だ。

 完全にジャケから入ったヤツ。つまりWoofさんは最高の絵師ってことなんですが、これまた超イケてるVaporwaveからFuture Funkあたりのshit!全然知らないアーティストですが、これがデビュー作でボルチモアの人らしいです。内容はアーリー90年代的なレトロ感を匂わせるハウスなんですが、Vaporwaveの中ではわりかしR&B色が強いのが特徴です。

 男女のデュオのエモ/マスロック。すげーなおいっていう演奏だけど、似た編成のホワイト・ストライプスとかに比べるとかなり爽やかでロックンロールよりもオルタナより。特にギターフレーズはアメフトっぽい爽やかな感じもある。

 エモつながりではこちら。こちらは大所帯バンドのようで、女性が入っているのが特徴。ボーカルもうまい感じで女声、男声混声で爽やかかつプログレッシブ。コーラスといっていいのかわからないコーラスありw バンド名がバンド名のため情報を探すのが困難であるが、どうもボストンのバンドみたい。

チップチューンFM音源カバーで有名な+tekからの新作。お題は『まもるクンは呪われてしまった!』ってことで安井洋介サウンドがお化粧直しして出来てます。原曲の良さがやはり際立ちますね。

 やっぱり今年も素晴らしかったJordan Rakei。どちらかと言えば、ロックっぽい方向に進化して、ものによってはジェフ・バックリィっぽさすらある。しかし、このジャケとこの音楽、シネマティックな感じが素晴らしい。

 ネタ枠。ジャケからも分かる通り、適当に作ったサウスっぽいトラックにボカロでふざけたリリックを載っける極めて下品でナードなやつ。このあたりのスカムっぽいヒップホップを探すことは今後の課題である。

 こちらBandcamp公式ナンバーワンのモーゼス・サムニーの新作。なんといってもLonely Worldがかっこよすぎ。ZUNTATAかと思ったよ。っていうかダライアス好きは聞くべき。まあ全体で通して聞くと多少暑苦しくて胸焼けするアルバムだけど、サムニーのボーカルはなんかもう人間のものじゃないくらいすごい。

日本の至宝、ujicoのSnail's House名義の方。サイコーにキュートでカワイイ未来のサウンド。Snail's House名義の方はクラブ系なんで、そっちが好きな人はそっちでロックよりの人はujicoの『[FLOWERS]』を聞こう。っていうかこの二枚のアルバムを同じ月に出すってどうよ。変態かよ。天才だ。

 これまた日本の至宝、Yuc'eと韓国出身で日本在住のトラックメイカー/プロデューサーのNorによるbeignet。今年、本作を含めて2枚だしているが、素晴らしいKawaii Future Bassである。Yuc'eのハードコア感と歌謡曲感が減ってよりグローバルなポップになっていて、さわやかに聞ける。ジャケットも含めて素晴らしい出来だ。

 たぶん一番聞いたかもしれないミカヅキ=チャンのEP。かなり多くの楽曲を出しているけど、やっぱこれがいちばん素敵。フォロワーの反応も一番良かった気がする。まあ詳しいこと知らなくてもポップソングとして聞けるのが多い。

 たしかイタリア在住のプロデューサーのロボによる日本のトラックメーカーのボカロアルバム。ボカロを使いながら強烈なEDM、だがやはりボカロらしい歌ものといういい塩梅に仕上がっている。

 

なんかまあいっぱい聞いているよなーっていう印象だけど、まじでBandcampはまだまだ面白い音源あるよ。

 

Kawaii Future Japan 2017年11月 Bandcamp

聞いた音源まとめる。聞いた音源まとめる。聞いた音源まとめる。

 

天才。天才だー。逃げろー。

この人まだ20代そこらの日本のトラックメーカーさんで、チップチューンとかはSnail's Houseという名義でやっているみたい。既にかなり有名っぽいぞ。このブログに記事がまとめらていた。

「Kawaii Future Bass」18歳サウンドクリエイターUjicoが初のメディア登場! : たんちゃん。ネット〜サブカルオカンとアニヲタ男子〜

自分は個別のアーティストとして認識していなかったけど、2015年にTREKKIE TRAXからリリースされたされたこのEPは聞いたことがあった。

こっちのと比べると[FLOWERS]はかなりロックであることがわかるけど、いずれにせよポップかつプログレッシブで幅広い。天才、天才だー。

 

これも天才だー。天才。しかも歌も歌えるぜ。YUC'eは女性のトラックメーカーのようだけど、これまたハードコアを基礎としながらEDMやダブステップの影響を色濃く、かなりプログレッシブで多様なトラック作っている。もうなんか説明するの面倒。タイトルトラックのFuture Candyがとてつもなくすごいテンション。

あんまり楽曲に触れなかったけど、日本の若者すごいってことだけ伝えたかった。Bandcampで最近発信してくるのは非常に助かるし、購入していこうと思います。

 

 

ゲームと戦争に関するくだらない考えの類

たまたまSNSとかで回ってきたWIREDのこの記事を読んでみたが……

wired.jp

正直、内容なさすぎて馬鹿なんじゃないかと思った。だって別にこれまでのリンク以外で具体的にゲームと戦争がどう関わるか何にも言ってないのだし。

まあこの記事のクズっぷりは置いといて、巷にあるゲームと戦争ネタについてちょっとコメントしておく。正直なところゲーマーとしてはこのような話題を聞き飽きたし、実際にゲームが軍事教育を含む様々なところで利用されていることは知っている。だけどそれは端的にテコの原理が様々なところで利用されているのを知っているのと大差はない。

問題はゲームというテクノロジーが人間の普遍的な技術であるにもかかわらず、ことさら戦争に関わることを強調するイデオロギーだ。確かにビデオゲームは軍事技術と関連が深いコンピュータによって生まれた。確かにアメリカ陸軍はリクルーティングのためにFPSを作った。でもゲームはインターネットや3Dといったその他のいろいろな技術とも関連するし、様々な教育のためにも利用される。でもそういったことではなく、なぜこのゲームと戦争ネタについてWIREDのようなメディアは特に意味ない記事を更新するのか。

このイデオロギーはせいぜいゲーマーじゃない人が意味深なため息をするために作られているだけであろうし、おそらくある種のテクノフォビアだろう。というかゲームフォビアか。おそらく文化や経済の中で大きくなりつつあるビデオゲームに対するある種の不安感から来ている(もちろん戦争がテクノロジー化していることもあるだろうし、そちらの議論については別に異論はない)。ゲームをあまりやらない人はなんだかわからないものが襲ってきている気分になるんだろう。だからこうでもしてゲームの悪徳を指摘せずはいられないんだろう。

まあ若干被害妄想的な話になるんだけど、WIREDは本家にもっとまともなゲームの記事あるんだから、こんなクソみたいな記事翻訳するんじゃねー馬鹿野郎。だからいつまでたっても日本のWIREDはゲーム音痴なんだ。

 

追記…

書いてて思ったけど、この手の記事はビデオゲームとその他のゲームを明確に区別せずに、なおかつビデオゲームが戦争を変えるとか言ってることが多い。そもそもビデオゲームは様々なテクノロジーの集積物であって、なんか一個の実体ではない。そして人間のモチベーションをハックしてやる気を与えるという意味でのゲームの技術は何もビデオゲーム固有のものではなく、それ以前のゲーム、ゲームじゃないものにある。ゲーミフィケーションとか呼ばれるとはいえ。

 

最近インターネット経由で聴いたもの

それほど音楽は聞けてない気がするけど、相変わらずBandcampで音源聴いて、気に入ったものは買うようにしています。まあといっても月イチくらいなのかもしれない。無料で聞けるものは無料で聞かせてもらっている。

それよりこれだけど……

www.fuze.dj

なんかいろんなふうに話題になったっぽいけど、私は基本的にタナソーの言っていることは賛成っていうか、未だにCDにこだわったりそういう音楽が本物でネットで垂れ流されている音楽は偽物みたいな人がいるのには驚く。というか、私なんぞはCDでは絶対聞けないような素晴らしい音源をネットでいろいろ知っているわけで。まあネットというシーンの音楽はそういうシーンであってなんでも良いものがあるわけじゃないし、Vaporwaveとか良いのかゴミなのかわからんものもある。でもやっぱそれはそれでシーンがあるわけだし、良いもん出てくるでしょうって。

ま、そんな話は置いといて

 まずはこれミカヅキBIGWAVEちゃん。あんまり知らないけど日本のアーティストみたくて、アニメっぽい音でフレンチハウスみたいなやつやってて、こういうジャンルはフューチャーファンクっていうらしい。個人的にはかのDJ Newtownことトーフビーツくんの再来ではないのかって思うほど、カット&ミックスの嵐が気持ちいい。ネタとなっているのはアニメだったり、シティ・ポップだったりしてその辺はVaporwaveとの関連もある。変なタイトルとか。あとはTwitterではこれは架空のアニメ美少女をフロントにすえた乙女ハウスではないかというなかなか示唆に富む指摘があって面白かった。乙女ハウスってのはこういうのを指すらしい

ともあれ、本当にこのアルバムは高品質なポップかつダンス音楽で、その元ネタは我々が生きてきた文化を反映していて、さらにインターネットにしか形成されないシーンから生まれたように感じる。あまり調べてないけど、ポストMaltineみたいなところに存在するのかなーとか思う。しかし、キックの強さが甘ったるいだけでなくていいね。これは本当にクラブミュージックだよって思う。

 中国のアメフトことChinese Footballってまんまやねん。実際にあの伝説的なエモバンドのAmerican Footballの影響が色濃い中国産エモバンドなのだ。フレージングは流石にアメフトばりとはいかないが、イカした爽やかなリフで爽やかな歌を謳う。ベースラインも良い感じで日本人好みするバンドサウンドな気がする。ついでに最初の「电动少女」はチップチューン版も作っていて、どことないナード感が本物のナードであったことをわからせてくれるのだ。ジャケのイラストもいいよね。こんなバンドが中国から出てくるなんて、ネットで音源漁ってないと気がつかないわ。

最近っていうか昨日とか見つけたやつだが、海外(ローマ)の人プロデュースの初音ミクコンピレーション。半分くらいはCHOPTOPCUBEっていう日本の方がソングライティングしているみたいけど、本当に素晴らしい。かなり現代風のEDMなんだけど、そのアッパーかつポジティブな感じがミクのボーカル、それもかなり機械っぽいボーカルにピッタリなんだよ。EDMとかたいていチャラい音楽で聞く気になれないんだけど、これはなんかもう圧倒される前向きなエネルギーに満ちている。

プロデューサーのロボっていう人はよくわかんないけど、イラスト(NSFWまでいかないけどアレなやつもあるので注意)も書いているようでジャケも彼の作品っぽい。絵も半端なくうまい。ローマで何やってんだよって思う気がするが、まさにインターネットだねっ。

ってことでネットで出会った音楽でした。

 

 

Alex Chilton / The Replacementsの訳詩をサルベージ

訳詞は意外と楽しい。解釈の自由度もある。精神的にもいいかもしれない。

The Replacementsは大好きなバンドだけど、あまり周りに好きな人が見当たらない。それはたぶんアメリカンすぎるロックなんだと思う。自分は結構ルーツ・ロックみたいなもの好きだから大丈夫だけど、たしかにポール・ウェスターバーグのソロなんかは日本人的な完成からは理解しにくいと思う。

ただこの曲「Alex Chilton」はその名の通り伝説的なシンガーソングライター、Big Starとかで有名なアレックス・チルトンをテーマにしているから、パンキッシュでポップ。メインのギターリフは最高で、初期のナンバーガールを思いっきりアメリカンにした感じ。やっぱアメリカンなのかといわれればそうなんだけど……。

 

 

もし彼が金星から来たんだったら、スプーンで俺たちにメシをくれただろうか?
もし彼が火星から来たのだったら、クールだったんじゃね?
キャンパスの真っ只中に立ち、ファイルにスタンプ押してくれるんだろうか?
始終メンフィスのあたりをうろついている。

100万くらいの子どもたちがアレックス・チルトンのために歌う
彼がやってくるときに
子どもたちは歌う「夢中だぜ!この曲はなんだ?夢中だぜ!この曲はなんだ?」

彼のチョイスの村々に頭にガツンと強姦、強奪
見える声で歌える見えない男
札束の予感、目の前で幸運を交換
サンマルコでへそくりをゴミみたいに数えている

俺はそんなに遠くへ行けないぜ、小さなビッグ・スターなしでは

家のあたりを走り回り、ミッキーマウスとタロットカード
さわがしいビデオをつけたままで、眠りにおちる
彼が金星から来たのならば、月で落ち合えるかな?
彼がメンフィスで死んだのならば、クールなんだろうな、たぶん

If he was from Venus, would he feed us with a spoon?
If he was from Mars, wouldn't that be cool?
Standing right on campus, would he stamp us in a file?
Hangin' down in Memphis all the while.

Children by the million sing for Alex Chilton when he comes 'round
They sing "I'm in love. What's that song?
I'm in love with that song."

Cerebral rape and pillage in a village of his choice.
Invisible man who can sing in a visible voice.
Feeling like a hundred bucks, exchanging good lucks face to face.
Checkin' his stash by the trash at St. Mark's place.

I never travel far, without a little Big Star

Runnin' 'round the house, Mickey Mouse and the Tarot cards.
Falling asleep with a flop pop video on.
If he was from Venus, would he meet us on the moon?
If he died in Memphis, then that'd be cool, babe.

(chorus)

 以上の歌詞は昔mixiに投稿したものだ。つたないところはあるけど、雰囲気は伝えている。やっぱサビの"I'm in love. What's that song?  I'm in love with that song."は最高にイケてる。かなりアップビートが聴いたリズムで乾いたドラムがトランポリンのように飛び跳ねる。カウベルの使い方もかなりよい。後半、アコースティックになるあたりのアレンジも凄まじくセンスが良い。これぞアメリカンパンクって感じ。

 

ありふれた表現、日常的な創作

世の中にはその辺の普通の人が作った芸術(あえてそう呼ぼう)を楽しめる人とそうでもない人がいる。たぶん大多数の人はアーティストや芸術家や作家や有名ブロガーやユーチューバーの作ったものしか楽しめないのかもしれないが、私は友人や家族やその辺の名もない人の作ったものを意外と楽しめる。これ自体はまあ良いとか悪いとかじゃないけど、もうちょっとみんなにもそういった「ありふれた表現、日常的な創作」を楽しめるようになってほしいと思っている。

ただやはりそういったものを楽しむにはいくつかの障壁がある。まずクオリティ。まあクオリティといっても実際にはいろいろだけど、一般にそういった「ありふれた表現」は往々にして商品や作品として流通するものに比べて、何かしらの「質の悪さ」がある。音質が最悪だったり、歌詞がいい加減だったり、カット割りがおかしかったり、線がクリナップされていない。ただこういった部分はある程度の作り込みや制作費の投入でクオリティアップがなされるため、そのアイデアや構想やコアな部分は十分に鑑賞に耐えうる。だいたい商業的な作品を作っている人もラフスケッチやデモの段階では荒削りなわけなのだから。

またこれらの荒削りな部分はそれはそれで味がある。商業的に作り込まれたものは良くも悪くも角が取れて、そういった荒削りな部分の味が薄まっている。ローファイと言われるような音楽のジャンルはその部分自体も美的な鑑賞の対象だ。

ある種のインディーゲームもそういった部分がある。これらの荒削りな表現は苦手とする人もいるだろうが、まあ要するに好みの問題という部分であってそんなに大したことではない気もする。

でも二番目の障壁として思いつくものはやや厄介そうである。それは作者との関係性だ。現代において作者と我々の関係は何らかの意味で隔たりがあり、商業的な作品を作る作者と直接と面と向かうことはほとんどの人はないだろう。そういった距離がある関係が通常であると、実際に知人や目の前にいる人が作ったものにどういう態度を取ればいいかわからない人は多いように感じる。

確かに作り手がそばにいる状態で何かの表現を鑑賞するのはやや特別なことに感じる。場合によってその人との関係性によって「純粋に」鑑賞ができないこともあるだろう。また逆にその人に関する特別な知識によって、他の人より多くの洞察を持つこともできるだろう。

この関係性にどう対処するのかは人それぞれだし、あまり答えはないように思えるが、ともかく慣れているかいないかにはかなり差があるように思える。コミケなどの同人誌即売会などに足を運ぶ人は直接作り手と向き合うため、こういった関係性にある程度の耐性を持っているように思える。

いずれにせよ、そういった近いところで出された表現にはそれ固有の楽しみもあり、プライベートな感覚に満ちている。 表現や創作といったことは何も匿名の「読者」だけに向けたものではなく、近い知人や家族、恋人に向けて作られることがあっても良い。むしろ歴史的にはそっちの方が古い表現であるようにすら思える。

最後に障壁とは異なり、私が「ありふれた表現、日常的な創作」に対して持つ独特な感慨について触れておこう。こういっては何だが、私は人を人として扱う以上に人類という生物として見ることが多い。そして、そこから生まれる創作物はビーバーの巣やサンゴ虫が作る珊瑚のように、広い意味での生物の表現型として考えている。つまり、それらは自然美としても鑑賞できるものである。いくら陳腐なメロディー、凡庸なフレーズであっても、その生態系やそれに乗っかる文化から生まれたことを考えると往々にして崇高なものとして立ち現れるものなのである。