Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

『Cytus II』における優れた音楽の演出

また『Cytus II』の話をしよう。このゲームが完結するまでは延々と推していくわけだから。

今回は本作の音楽を使った物語演出の妙を紹介しよう。主役となるのはNEKO#ΦωΦ(NEKO)とPAFF(Aroma)だ。メインストーリーでも重要なこの2人は本作では2つのシナリオを軸として扱われ、NEKOは新米コンポーザー時代、NEKO#ΦωΦはストリーマー時代、Aromaは歌姫デビュー時代、PAFFは歌姫として人気絶頂期のシナリオが展開する。そしてこの二人のそれぞれのシナリオはほぼ同一の時間軸で発生している。

今回紹介するのはNEKO#ΦωΦに収録されている『Sunday Night Blues』という曲を使ったとても効果的な演出だ。本楽曲は「療養中と言われている人気歌手PAFFの目撃情報?MONOが秘かに新曲発表?」といった設定の「Marvelous Mix vol.1」というソングパックに収録されており、2018年8月3日にリリースされた。

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穏やかな前奏で始まりながらも、後半からはFuture Bass的なSuper Sawなシンセ、やジャージーハウス的なギシギシ音が入れられる。乾いた鉄琴のような音もFuture Bass、しかもKawaii Future Bass的な感じがある。

ただこの曲、NEKO#ΦωΦ全体の楽曲からするとやや異色に聞こえる。というのは、本作におけるNEKO#ΦωΦの楽曲は、ストリーマーとしてのネタ曲や宣伝しているという設定で収録されている本作と同じくRayarkのゲーム『Sdorica』の曲が中心なのだ。ストリーマーという設定を用いてこういう遊びを行うのはなかなか興味深いが、その中において『Sunday Night Blues』はややシリアスよりかつ、どこか未完成といった印象がある。

実はこの謎はAromaのストーリーを進めると解ける。というのは、本作はNEKO#ΦωΦがPAFFのために作ったデモ楽曲であったことがわかるからだ。

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このログではAromaがNEKOの楽曲を聞いているシーンだが、音楽となっているところをクリックすると『Sunday Night Blues』の断片が再生される。この曲を気に入ったAromaはPAFFとしてぜひともNEKOとコラボしたいと思うのだが、残念ながらこのコラボはNEKOのインターネット上の素行の悪さとPAFFの所属事務所Monoの意向でうやむやとなる。そこでアンロックされるのが、次の曲『Make U Mine』だ。

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あからさまなFuture Bass的なSuper Sawなシンセ、ボーカル、そして後半に展開するジャージーハウス独特のリズムとギシギシ音。この音色を聞けば、本作が『Sunday Night Blues』から派生した楽曲であることは明らかだろう。ただボーカルはどこか頼りなく歌われており、これもまたAromaがPAFFの曲にしようとした仮歌という側面も感じる。

いずれにせよ、『Cytus II』ではこのような音楽表現で物語の演出をうまくするのに長けている。これらの楽曲があったため、プレイヤーはNEKOの音楽能力とAromaがコラボしたかったということ表現され、その後の展開は切ないすれ違いとして認識されるわっけだ。ともあれ、彼女たちがこの場面で一瞬でも邂逅したのは本筋においても重要であり、とくにAromaが自身を取り戻すきっかけをつくるのもNekoだ。だからこそこの『Make U Mine』という曲は重要なんだろう。

ちなみに『Sunday Nighy Blues』は台北のTeru Foxによるもので、『Make U Mine』はJames Landino ft. Jennyによるものだ。このあたりのバラバラの楽曲を演出上にとりいれるのは面白い。