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Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

音楽のサブスクリプションサービスに疑問を呈するBandcampのポリシー

2010年代に入って、私の音楽はほぼBandcamp一色であったと言って良い。ことあることにこのサービスの素晴らしさを主張してきたので、ここでは端的に説明しよう。

Bandcampはもともとインディー系のアーティストを支援するための音楽プラットフォームだ。アーティストは自由にページを作成して、音源をアップして、即座に販売が行える。プラットフォーム手数料は10~15%という超低価格。通常、この手のプラットフォームは3割持ってくのが当たり前と考えると、これがどれくらいアーティストに優しいプラットフォームか理解いただけるだろう。(Bandcampについてはここで日本語で詳しく説明している。

ちなみにデジタルだけではなく、アナログ盤、カセットテープ、グッズも売れる。モバイルアプリからはライブラリがストリーミングで聞ける。こういったユーザーの利便性からいってもほぼ最強のプラットフォームといえるだろう。あなたの好きなアイドルソングが流通していないことは別にするならば、だが......。

そんなBandcampが興味深いレポートを出していたので翻訳してみた。

Bandcamp, Downloads, Streaming, and the Inescapably Bright Future

Appleが音楽ダウンロードサービスから撤退するだろうという最近のレポート(後に否定されたが、おそらくある程度の撤退は避けがたいであろう)を踏まえて、Bandcampの今後のビジネスとプランについて皆さんに報告する機会を持とうと思う。

Bandcampは昨年、+35%の成長を達成した。ファンたちは毎月、Bandcampで430万ドルをアーティストに支払い、彼らは一日に約25,000の商品を買い、それは4秒に1枚売れるというペースである(Bandcampのホームページのリアルタイムの購入欄で確認できる)。約600万のファンがBandcampから音楽を購入してきた(彼らの半分は30代以下である)、そして何十万ものアーティストはBandcampで音楽を売っている。Bandcampのデジタルアルバムのセールスは2015年に+14%の成長をしたが、一方で業界全体では-3%の低下を示している。トラックごとのセールスはBandcampでは+11%の成長、業界全体では-13%の低下。アナログは+40%、カセットは+49%、さらにCDであっても+10%の成長を示している(業界全体では-11%の低下である)。もっとも重要なことは、Bandcampは2012年から黒字であることだ(収益がコストを上回るという意味で)。

一方でサブスクリプションモデルの音楽ストリーミングサービスは、たとえ何百万ドルの投資を受け、それを突っ込んだ後ですら、未だ成長可能なモデルであること立証できていない。我々の立場としては、我々がうまくいくと知っている別のやり方を提供していくことに専念していくだけだ。お気に入りのアーティストの生活を心配して、彼らに音楽を作り続けてほしいと望むファンがいる限り、我々はその直接的なつながりをつくることを提供していこうと思う。そして、アーティストの音楽を借りるのではなく、所有することを望むファンがいる限り、我々はそういったサービスを提供し続けていくつもりだ。そして、このモデルが結局のところ、その収益においても我々が今後も続行するモデルなのだ。我々は2008年からそうしてきたし、2028年にいてもそうであろうと思う。ありがとう!

*Bandcampはダウンロードストアではない。我々はストリーミングの利便性を快く受け入れる。Bandcampで音楽を購入すると、デジタルであれフィジカル(Bandcampのセールスの30%はアナログ盤もしくはグッズ販売である)であれ、直接的で透明性の高いやり方でアーティストを支援する楽しみが得られるだけではなく、高音質なダウンロード音源と同時に、AndroidiOSの無料アプリによってすぐに恒久的な音楽ストリーミングを楽しむことができるのだ。Bandcampでの音楽購入は直接的にアーティストを支援し、音楽を所有してアクセスできることであり、それは音楽へのアクセスがストリーミングかダウンロードか、その両方かによらない。そのため、どうか「サブスクリプションサービス」の短縮形として「ストリーミング」という言葉を使わないようにしてほしい。前者は避けがたい技術的な変化であり、後者は未だ実証されていないビジネスモデルであるのだから。

Bandcamp, Downloads, Streaming, and the Inescapably Bright Future « The Bandcamp Blog

 

 要するにBandcampでは音楽のサブスクリプションサービスに懐疑的であり、これまで通り、アルバムやトラックごとのビジネスモデルを続けていくという宣言だ。そして彼らはそれがファンとアーティストをつなぐ一番良いビジネスモデルと信じているようだ。

実際、UIや利便性に加えて、Bandcampのビジネスモデルも非常に洗練されている。あなたは音源を購入するのであるが、Bandcampではこれを単なる消費とみなさない。アーティストへの「支援(support)」とみなすのだ。実際、販売ページを開いてみると...

axiomverge.bandcamp.com

 リンク先に飛ぶと、アートワークの下にsupportedという言葉が見えるだろう。つまり誰がこのアルバムに課金したのかがわかるシステムになっているのだ。ライブラリを可視化する試みはゲーム販売プラットフォームのSteam等でも行われているが、Bandcampは遥かに自覚的にこの可視化がアーティストへの支援というアティチュードを生むと確信しているのであろう。そして上の報告の結果を読む限り、実際に功を奏しているのである。

このBandcampのあり方は、デジタル時代の販売について深い考察を促す。我々はデータを買っているのではないのだ。作り手を支援しているのだ。もちろん、お題目としては常にそういったことは叫ばれてきた。クラウドファンディングやPatreonのようなマイクロパトロネージサービスも似たような発想だろう。しかし、Bandcampは非常に愚直なやり方でそのポリシーを体現している。