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Dance to Death:死に舞 on the Line

Music and Game AND FUCKIN' ARRRRRRRRT 今井晋 aka. 死に舞(@shinimai)のはてなブログ。

Dischan Media:海外ビジュアルノベルが抱いた一つの夢 2

さてJuniper's Knotに衝撃を受けた私は、当然ながらネットストーキングを始める。すぐにDischanのページは見つかったが、彼らがどういった存在かはあまり理解ができなかった。というのも、彼らはどうも違った出自を持つ、バラバラの集団のようであったためだ。

 Juniper's Knotが作られた2012年はすでに海外ビジュアルノベルの下地はできあがっていたようだ。これにもっとも貢献したと思われるのは一つのソフトウェアである。Ren'Pyは2004年から開発されているビジュアルノベルエンジン。Pythonを基盤としながら「恋愛ゲーム」を作るという意味でRen'Py(レンパイ)という名前だ。

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ツールが普及した結果、英語圏にはビジュアルノベルを制作するネットワークが成立し、フォーラムでは活発な議論と共に多数の作品が作られている。さらに制作者同士コミュニケーションによって、ビジュアルノベルの制作ネットワークは小さいながらも国際的なものに発展していったのである。

ここらへんの展開は日本とはかなり違うように思える。英語という言語の強みを活かした結果、英語圏ビジュアルノベルシーンは急速に国際化したのだ。絵師が東南アジア、プログラミングが北欧、シナリオが北米。そんな感じである。

Dischanもご多分に漏れず、国際的な集団だった。WikipediaによるとファウンダーであるJeremy Millerはもともとカナダの大学生であったようだ。Juniper's Knotのライター兼プログラマのTerrence Smithもおそらく北米出身だろう。CombatPlayerはデンマーク。Doomfestに関しては未だ謎が多いのだが、シンガポールあたりの東南アジアではないかと予想している。(知っている人がいたら教えてほしい)

ともかく、Ren’Pyというソフトウェアによって成立した海外ビジュアルノベルシーンは急速にグローバル化した。今では中国や台湾等の東アジアのビジュアルノベルがSteamで配信されることすら珍しくなっていない。では、そんななかでDischanが目指したビジュアルノベルの姿とはなんであっただろうか。

Cradle Song:開発中止になった正統派学園ビジュアルノベル

話は冒頭に戻る。私がJuniper's KnotをきっかけとしてDischanについて調べた結果、発見したのはCradle Songという作品だ。私が見つけた時点ではまだ開発中であり、プレイアブルデモで遊んだ記憶がある。日常的な高校生活を描きつつ、ホラー要素のある非日常が挿入される点では、デモの段階ではストーリーもイラストもありがちなビジュアルノベルであったように思える。それでもやはりUIやイラストレーションのセンスは一見に値するものだ。

www.youtube.com

 

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本作は実際にはJuniper's Knot以前に開発が開始した彼らの処女作であるはずものであった。しかしながら、詳しい理由はわからないが、開発は中止となった。詳しい経緯はわからないが、どうも彼らには小さな作品であるJuniper's Knotをリリースした後、もう一つの作品であるDysfunctional Systemsに注力するという方針をBlogでは語っていたように思える。

とはいえ、青春学園ブコメとサイコホラーを合わせたCradle Songも十分に魅力的な作品に思える。メインのイラストレーターと音楽は同じくDoomfestとCombatPlayer。シナリオはDischan代表のJeremy MillerとTerrance Smithがつとめる。またChristine Loveの作品のイラストレーターをつとめるRaideも関わっている。

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実際に完成されたのはJuniper's Knotであったが、このころのDischanの公式Websiteには Christine Loveの Analogue: A Hate Storyなどの他のデベロッパーのゲームが販売されるようになった。つまりDischanは単なるゲーム開発チームだけではなく、高品質のビジュアルノベルを販売するプラットフォームにもなろうとしていたのである。おそらくこの時期が彼らの大望「英語圏により良いビジュアルノベルを生み出す」という理想が最高潮にあった時期だろう。その理想のもとに集まったメンバーがゲームを作り、販売して、普及する。そしてついにKickstarterで初の長編作品の開発が始まったのだ…